教育に関わる人は必読!「AIに負けない子どもを育てる」を読んだ感想



「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の続編です。前回の本では、読解力が低いことを紹介することがメインでした。今回は主に以下のことが書かれています。

・大手企業のRST(リーディングスキルテスト)の活用法

・RSTの体験版

読解力を上げるためにはどうすればいいか

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」を読んでいない人達へ

読んでいなくても問題ありません。この本を読んで、興味がわけば読む程度で良いと思います。端的に紹介しますと、著者の新井さんの研究で、多くの人が文章をちゃんと読めていないことが発覚しました。例えば以下のような問題を考えてみましょう。

幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。

 

上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。

 

1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

 

答は「異なる」です。簡単ですよね?こんなの間違えるわけないと、普通の人は考えるはずです。しかし、中学生と高校生の正答率は以下のようにとても低いものでした。

中学生:57%

高校生:71%

ここで言う高校生とは、大学進学率がほぼ100%の高校に通う人達です。驚くべき数字です。もちろん、生徒が真面目に受けているのは確認済みです。同じだとみなす生徒の言い分は以下のような感じらしいです。

「キーワードとなる語は全部合っているじゃないですか」

愕然としますよね。使われている語が同じだったら意味も同じになる、そんなことを考えている人たちが多かったら、世の中はおかしなことになってしまいます。

 

でも、社会に出てみると確かにそんな人が多いと感じている人は沢山いると思います。

・意味が全然わからない指示を与える上司

・話すと普通だが、メールでやりとりすると途端に会話がなり立たなくなる人達

僕の周りにもこんな人たちが沢山いました(笑)まぁ僕もその一員である可能性は多少ありますが…。

 

数学に関して言えば、次の問題の正答率が衝撃的でした。

問題:次の文の内容を表す図として適当なものを、①~④のうちからすべて選べ(図は省略)。

原点 O と点 (1 , 1) を通る円が、x 軸と接している。

高校生の正答率:32%

繰り返しますが、大学の進学率が100%の高校しか対象にしていません。この問題がわからないとなると、数学は無理です。選択問題で32%となると、当然、上の問題のような図を描け、という問題の正答率は更に下がるでしょう。正直、数学を勉強するだけ時間の無駄でしょうね。

 

以上のように、現在の子どもたちの読解力の現状に警鐘を鳴らしたのが前作です。この本には、読解力が低い場合にどうしたら良いか?が書かれていませんでした。今回の本では、そこに踏み込んで、読解力を上げるにはどうしたら良いか、も書かれています

 

ちなみに、読書量と読解力の間に相関関係はありません。全くの無関係です。このことは新井さんの調査で証明済みです。また、その調査結果を疑問に思った広島大学の研究チームも独自に調査を行い、相関関係がないことを確認しました。

大手企業のRSTの活用法

RSTは小学生から一流企業のホワイトカラーまで合計18万人程度が受検しました。その中で、大企業は以下のような目的で使うことが多いようです。

・新人研修

・採用活動でのふるい分け

このうち2つ目を見ていきます。

RSTを使った就活生のふるい分け

採用活動でのふるい分けは以下のような役割があります。

・出身大学の偏差値はいま一つだが、実は読解力を高い人を拾うため

暗記やAOで高偏差値の大学に入ったけれども、実は読解力が人材を避けるため

 

現在の入試制度は多種多様です。

・入試科目が少ないMARCHの穴場学部!

・早慶に楽して入る方法!

上記のようなHPや塾の広告などを見たことはありませんか?このような入試制度である程度の大学に入っても、結局は就職で不利になる可能性が極めて高いです。もし、多くの企業がRSTを利用したとすると、この人たちはまずい状況に置かれるかもしれません。

 

実際に、一部上場企業が新人研修でRSTを使い、新井さんにアドバイスを求めたことがあったようです。その中で新井さんはテストデータだけを見て(出身大学などの情報はまったく見ずに)以下のようなプロファイリングをし、それが物凄く当たっていて、採用担当者がびっくりしたようです。表現は少しだけ変えています。

・AさんはDランクの私大文系で体育会系。営業職で取ったのかもしれませんが、マニュアルを読めないので、コンプライアンスを守れない可能性が高いです。

・Bさんは某有名私大のクオンツ志望ですかね。理数の問題は出来ていますが、推論とイメージ同定が中学生並みです。大学入試で記述式の入試を経ていないため、数学を知識として詰め込んでいる気がします。

・CさんはTOEICかSPIの点数がものすごく良かったのではありませんか?それは対策塾に通った成果で、本当は読めていないと思いますよ。

出典:AIに負けない子どもを育てる p.110

現状でこのような分析が出来るのです。もっと多くのデータが集まれば、精度の高い分析が出来るようになるでしょう。僕が言えることがあるとすれば「MARCHの穴場学部や、あまり知られていないけど、早慶にはラクして入れる学部があるんだよ」みたいなことを塾で言われたとすれば、その塾は即刻辞めるべきでしょう。結局後で痛い目を見ます。

 

新井さんも著書の中で以下のように言及しています。

卒業大学のブランド(偏差値)と基礎的・汎用的読解力が乖離している場合、その受検者は、大学入試が想定している学力試験に対して「想定外」の行動をとってきたに違いない、ということになります。私はこれを「社会システムの矛盾を突いた受験行動」と呼んでいます。

 

読めない子やその保護者にとっては、ある私立大学を第一目標に定め、その入試形態に合わせて最適化するのが、大学受験に対しての「利口な」受験行動でしょう。ただし、その行動は短期的に最適なだけで、長期的に意味があるとは思えないのです。

 

「基礎的・汎用的読解力」を身に着けて、ふつうに教科書で勉強し、堂々と大学入試に臨むのが、のろまな亀のように見えて、結局は最も賢い生き方なのではないかと思います。

出典:AIに負けない子どもを育てる p.110~112

 

RSTの体験版

この本にはRSTの体験版がついています。本物はパソコンを使って受検します。この本に載っているのは、使い終わって廃棄が確定した問題です。内容は以下の通りです。

・問題は6分野7項目に分かれている

・各項目は易~超難までの4題で構成されている

・各分野10点満点の合計70点満点

・各分野の点数から、皆さんがどういったタイプなのかを判定できる

 

小学校5年生でも満点を取ることができるし、大人でも全然点数を取れない場合もあります。数学の「約数」などと言った小学校で習う知識は使いますが、基本的には前提知識なしで大丈夫です。答は全部本文中に書かれていて、それを読み取るテストですから。

 

例として照応解決の超難を見てみましょう。

以下の分を読みなさい。

前202年、農民出身の劉邦が中国を統一して漢を建国し、郡県制と封建制をあわせた郡国制を採用した。前2世紀の武帝の時に最盛期をむかえ、朝鮮半島やベトナム中部にまで支配を広げ、また北方の匈奴をやぶった。

 

問題:この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを1つ選びなさい。

武帝の時に最盛期をむかえたのは(   )である。

①劉邦   ②漢   ③郡国制   ④農民

出典:AIに負けない子どもを育てる p.56

答は載せません。読めば、答が書いてあるんですから。個人的にはなぜ超難なのかさっぱりわかりません。むしろ易だと思います。こういうことが普通に出来ないと、大学入試は無理でしょう。本文中に答が書いてある問題がわからないのに、答が本文に書いてない問題が解ける、なんてことが出来ると思いますか?

 

子どもを塾に通わせようと考えいる子ども持つ親御さんは、まずはRSTを受検させてみては如何でしょうか。こんなことが出来ないのに塾に通って成績が上がるわけないですもんね。塾は読解力を上げてくれません。

読解力を上げるためにはどうしたら良いか

前回の本に書いてありましたが、悪名高いアミラーゼ問題というものがあります。

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

セルロースは(   )と形が違う。
(1)デンプン  (2)アミラーゼ  (3)グルコース  (4)酵素

出典:AI vs. 教科書が読めない子どもたち

この問題は某新聞社の論説委員から経産省の官僚まで、なぜかグルコースを選ぶようです。また、新井さんのもとで働いていた東大生に頼んで、東大のゼミ仲間に解いてもらってみたところ、東大の日本人大学院生は全滅したようです(笑)唯一正解したのが中国からの留学生でした。

 

東大の院生が情けない、ということを僕が言いたいわけではありません。中国人の留学生は正解できた、ということが大事です。なぜなら、これは訓練すれば誰でも読めるということを示してくれているからです。僕たちが英語を学ぶ際、文型(SVOCなど)や文法を学びます。それで英文の構造を捉えています。しかし、日本語でそれを習った記憶はありません。もしかしたら、小学校の時にやったのかもしれませんが。

 

一方、中国人が日本語を学ぶときは文法などをきっちりやっているはずです。そして、そういう勉強をした中国人は東大の院生より日本語を正確に読めるのです。じゃあ、日本人が日本語の勉強をすれば出来るはずです。じゃあどんな風に勉強すれば良いのか?それは本を読んで下さい。また、大人でもちゃんと読解力が上がることが書いてあります。

読解力を下げた原因と考えられるものの1つは穴埋めプリント

これを聞くと驚く人がいるかもしれません。穴埋めプリントは、子供たちの読解力を下げている可能性が高いようです。詳しい理由は本書に譲ります。実際、プリント学習をすると、定期テストの点数は良くなるようです。しかし、読解力は低いままなのです。よって、定期テストや難しくない高校受験の成績は多少よくなるものの、大学受験では歯が立たない生徒を量産してしまうのです。面白いですよね。良かれと思ってやってることが逆効果なのです。

 

これに似たような経験は僕にもあります。僕は関西にいるときに、高校1年生を相手に授業する機会がありました。そのクラスには、理数科や文理学科と呼ばれる、トップ校の中でも上位に属する生徒がいました。実際に、入試の数学の点数を聞くと120点中100点以上を取っていた人が多かったです。すごいなと思ったので、どうやって勉強してたかを聞いてみると

「塾の理数科用のコースに通っていて、そのテキストにある問題を考えずに出来るまで繰り返し解いた。入試でも同じような問題が出たから点数を取れた」

みたいな声が多かったんですね。結局、これが1つの大きな成功体験となっていまい、大学受験では通用しなくなる人が多かったのです。まぁ、「お前の指導方法が悪かっただけだ」と言われれば、返す言葉はないのですが(笑)逆に入試の成績は良くはないけど、中学時代に頭を使う訓練をした生徒は良く伸びます。

 

彼らは同じようなことが大学受験でも通用すると考えてしまうんですね。要するに暗記すれば点数が取れるんだろう、と。でもね、無理なんですよ。大学受験を暗記だけで突破するのは。僕はそんな指導をした塾が悪いと思っています。高校受験までで頭打ちになる勉強をさせるなんて酷い話です。親が〇〇高校合格という近視的な見方しかできないから、いけないのかもしれませんが。

 

大学受験だって本来は、大学入試後を見据えて勉強するのが一番良いはずです。それを「どうしても△△大学に入りたいなら、1科目で受験できる〇〇学部を選べ!」や「〇〇という科目は△△より点数が取りやすい!」みたいなことを勧める塾があるのは百害あって一利なしでしょう。何が大事なのかをきちんと教えるのが塾の役目の一つでもあると思うのですが、最近は営利目的の塾が多かったり、受験生も就職のために有名大学に行きたい人が多いので、仕方ないのかもしれませんね。

最後にまとめとして

何かしらの勉強に関わっている場合、RSTを受検してみる価値が多いにあります。というのも、読解力がないと勉強しても伸びないからです。私立文系みたいに、暗記で済むところならどうにでもなりますが、国公立やMARCH以上の理系は無理でしょう。4000円で受検できます。読解力があれば、きちんと頭を使った勉強をすれば伸びます。どんなサイトや情報を見てもわかると思いますが、彼ら彼女らは特殊な勉強をしているわけではありません。簡単な参考書から難しい参考書まで順番に進めているだけです。

 

しかし、同じような参考書を使って、言われたように勉強しているのに全然伸びない人がいるのも事実です。その原因はおそらく読解力です。文章を読んで、正しく意味を捉えられなければ、伸びないのは当たり前です。もし、読解力があり(RSTの点数が良い)、勉強しているのに全然伸びない人がいたら教えて下さい。この本に書いてある通り、そんな人はいないはずです。

 

ちなみに、毎年東大に50人以上入っている中高一貫校の中学生が受検したところ、大半は大企業のホワイトカラー並みに読めていることが確認されています(p.90を参照)。その学力を支えているのは読解力だと言っても過言ではありません。このような下地があるから、勉強すれば伸びるのです。

 

皆さんは、どの科目を勉強する時でも「基礎が大事」と言われたはずです。でも、勉強の本当の基礎は読解力です。その上に各科目の基礎を築く必要があるのです。

 

RSTを受検してみようと思う方は以下のHPを参照して下さい。代ゼミがいち早く目をつけたようですね。素晴らしいと思います。本来は「ACE Academy」や「武田塾」のような自学自習を謡ってる塾が導入すべきだと思います。しょせん金儲けしか考えていない塾なんですかね。残念です。

代ゼミ:https://www.yozemi.ac.jp/rst/ (個人受検の方はこちら)

RSTのHP:https://www.s4e.jp/ (20名以上で受検を考えてる方はこちら。個人では受け付けていません。)

 

 

 



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